「みんなー、今日は来てくれてありがとう!!」
響いたその声に少女は顔を上げる。 視線の先には、ドーム。 ドームの屋根は開いている。 歓声。 少女は纏ったマントを強く握ると視線を下げドームへ足を向けた。 「すっごいねー! りんちゃん! すっごいライブだよ!」 ![]() あんたはしゃぎ過ぎ、とツッコミを入れておく。 けど、気持ちは良く分かる。 なにせ765プロ所属の『シュバルツェ』と言えば、人気絶頂のアイドルグループ。 こんな大きな舞台に我らが春日野うららはゲストとして呼ばれた。 ただ、本人は女優じゃなくて歌手として呼ばれたことに少々複雑だったようだけど。 ライブは始まったばかり、うららが登場するのはもう少し後だから、 今はこの雰囲気を存分に楽しもう。 「はぁ〜、私も見たかったかな……」 ドームのロビーでため息をついた。 けど、仕方が無い。 今日は、海春姉は仕事で来れず、霙姉がライブに来るわけもない、 春風は会場にいる妹たちを見てるから、となるとおねむの妹たちを 見るのは私しかいないからな。 声が変わった。春日野うららの声だ。 うちの小さい妹たちが好きな子。 まったくうららを見に来たというのに……。 あ、また声が変わった。もう一組ゲストが来てたんだっけか。 「こちらティアナ・ランスター。ロストロギア反応を確認。回収に向かいます」 気を付けてというシャーリーさんの声を聞き、盗聴を考え念話を切る。 この次元来るのは2度目。 前回は機動六課の任務で、今回はフェイト執務官の補佐としての任務だ。 ジェイル・スカリエッティの研究成果の回収。 すでに故人だが、彼の研究成果は未だ数多く残っている。 その回収、もしくは破壊が現在の任務である。 反応を検知したロストロギアはジェイルの研究成果の可能性がある。 ふぅ、と息を付く。 まずは目視での確認。次に能力の確認。一人で回収できるなら回収し離脱。 無理ならフェイト執務官に連絡指示を仰ぐ。 心の中で反芻する。 と、ドームから悲鳴。 「や……め……て」 頭を抑えながら声を絞り出す。 あの二人が、亜美と真美に声が似てるあの二人が歌い始めて、 そしたら、ファンのみんなも私達も……。 お願い……私達のライブを壊さないで……。 「えへへ、成功だね、レン」 「ああ、そうだな、リン」 辺りには薄い桃色の霧が漂っている。 このライブの第二の目的であるジェルの採集が始まった。 じゃあ、もうひと頑張りしようと、うなずき合い。 大きく息を吸った。 ![]()
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